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賃料収入を差し押さえられる担保不動産収益執行とは?

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収益物件を所有していて、ローン返済ができなくなると債権者(多くの場合には銀行等の金融機関)から支払いの督促が来て「担保不動産収益執行」という手続きをされてしまうことがあります。

日常では聞き慣れない言葉ですが、担保不動産収益執行とはどのような制度なのでしょうか?

今回は、賃料収入を差し押さえられてしまう「担保不動産収益執行」について、解説します。

ローンの支払いが滞っているオーナーの方は必ず目を通してください。

1.担保不動産収益執行とは

1-1.担保不動産収益執行とは

担保不動産収益執行とは、債権者(金融機関)が債務者(収益物件の所有者)の代わりに、債務者が請求できる賃料を直接取り立てることができる手続きです。

債務者が支払いを滞納したときの取り立て方法である「強制執行」の一種で、2003年に作られた比較的新しい制度です。

強制執行とは、いわゆる差押えのことですので、担保不動産収益執行は、賃料収入を差し押さえられてしまうことだと考えるとわかりやすいです。

1-2.担保不動産収益執行が起こりやすいケース

担保不動産収益執行などと言われても、耳なじみがないので、具体的にどのようなケースが発生するのかイメージできないことが多いかと思います。

担保不動産収益執行が行われることが多いのは、投資用の物件を購入した場合です。

最近では、不動産賃貸業が人気を集めているので、投資用のマンションやアパートを購入したり、建築したりする人が増えています。このような場合、一括で購入代金を支払うことが難しいので、ローンを組んで購入することが多いです。

ところがその後、そのローンを返済出来なくなる人がいます。

放っておくと、債権者はローンを回収できなくなるので、賃料を差し押さえるために、担保不動産収益執行を行います。

担保不動産収益執行により、毎月賃借人が支払う賃料をローンの債権者が受けとることができるので、その限度までは賃料によりローンを回収されてしまいます。

1-3.物上代位との違い

不動産収益執行は、「物上代位」という制度と非常によく似ています。

物上代位は、抵当権者が直接、債務者が所有している不動産から発生する賃料収入を差し押さえることができるものです。これは民法371条に規定されています。

2003年に担保不動産収益執行の規定が創設されるまでは、債務者がローン返済を滞納したとき、債権者はこの物上代位によって賃料を差し押さえるしか方法がありませんでした。

物上代位による方法も担保不動産収益執行も、両方とも賃料を差し押さえる手続き(債権差押え)の一種なのですが、効果や内容が異なります。

以下でそれぞれの違いについて見ていきましょう。

●賃借人を誰が探すか

賃料を支払うのは賃借人ですから、賃料を差し押さえるためには、賃借人を特定しなければなりません。

物上代位の場合には、差押えの申立前に、債権者が賃借人を探して特定する必要があります。そこで、債務者の立場からすると、賃借人が誰だか債権者に知られていない間は、物上代位の申立をされずに済んだのです。

これに対し、担保不動産収益執行の場合、債権者からの申立があると、裁判所が物件の使用状況を調査します。
そこで、債権者が賃借人を把握していなくても、申立によって賃料を差し押さえられてしまう可能性があります。

●賃料回収を誰が行うか

賃料を差し押さえるためには、賃料回収を行う必要があります。具体的には、賃借人に連絡を入れて、毎月直接支払いを受ける作業です。

物上代位の場合には、賃料回収は債権者が自分で行う必要があります。この場合、債務者に対して賃料が支払われることはありません。

これに対し、担保不動産収益執行では、裁判所が選任した管理人が賃料を回収して、債権者に配当するので、債権者は直接賃料の回収を行う必要がありません。この場合にも、債務者には賃料が支払われません。

●物件の管理を誰が行うか

ローン支払いを滞納するような債務者は、物件管理もきちんとしないことが多いです。物件が管理されていないと、いろいろなところに傷みが発生して、物件価値が下がってしまいます。

そうなると、賃借人も入らなくなってしまいますし、入ったとしても賃料が安くなります。売却するにしても、価格が下がってしまうでしょう。

物上代位の場合には、賃料を差し押さえる手続きですから、債権者が直接物件を管理することはありません。物件が放置されていても、黙ってみているしかありません。管理権限はあくまで賃貸人である債務者に認められます。

これに対し、担保不動産収益執行の場合、不動産の管理権限は、裁判所が選任した管理人に移ってしまいます。そのため、債務者は自分の都合で管理することができなくなります

この意味で、担保不動産収益執行の方が債務者に対する影響が大きいと言えます。

●費用

物上代位と担保不動産収益執行とでは、債権者にとってかかる費用が大きく異なります。

物上代位の場合には、基本的に債権者が賃料回収や管理などのすべての雑務を行う必要があるので、その分費用は安いです。通常の債権差押えの手続きと同じなので、数万円程度で済むでしょう。

これに対し、担保不動産収益執行の場合には、管理人を選任して、管理人への報酬や管理費用等も払わないといけないので、高額な費用がかかります。ケースにもよりますが、60万円~90万円程度は必要になります。

このように、担保不動産収益執行は、債権者にとって負担が発生するものですから、どのようなケースでも気軽に利用されるというものではありません。

どちらかというと、大規模な不動産賃貸のケースで、債権者が個々の賃借人を把握しにくい場合や管理が煩雑なケースなどで利用されやすいです。

1-4.競売や任意売却との違い

通常、不動産のローンを滞納すると、競売や任意売却が起こるイメージがあります。担保不動産収益執行は、これらの手続きとどのような点で異なるのでしょうか?

競売とは、債権者が裁判所の許可を得て、不動産を強制的に売却し、売却代金からローンを回収する方法です。
また、任意売却は、債務者がローン債権者の同意を得て、自主的に不動産を売却し、売却代金をローン返済に充てる方法です。

競売や任意売却の場合、債権者に不動産からの収益(賃料)をとられることはありません。債権者が受けとることができるお金は「物件の売却代金」です。

また、債権者がお金(売却代金)を受けとることができタイミングは、競売や任意売却が終了した後なので、裁判所への申立時から半年~8ヶ月くらい後になります。その間の賃料は、債務者が相変わらず受けとり続けることができます。

これに対し、担保不動産収益執行の場合には、申立をすると比較的早期の間に、賃料は債権者に対して支払われるようになります。そこで、債務者はすぐに賃料を受けとることができなくなってしまいます。

また、競売や任意売却の場合、最終的には物件自体が失われますが、担保不動産収益執行の場合には、差押えの対象になるのが賃料のみなので、物件自体が失われることはありません。

2.担保不動産収益執行で、賃料が差し押さえられるまでの流れ

債権者が担保不動産収益執行を申し立てた後、どのような流れで賃料が差し押さえられるのか、確認していきましょう。

2-1.申立

まずは、債権者から申立が行われます。

申立手続きはさほど難しくないので、一般の個人や法人であってもできるレベルです。申立書を作成し、当事者目録や担保権・被担保権目録、請求債権目録、差押え債権目録などの目録書類を作成して、必要書類を揃えて費用を支払えば、申立ができます。

申立にはさほど時間がかからないので、ローンを滞納すると、比較的早い段階で債権者が担保不動産収益執行の申立をしてしまう可能性があります。

●必要書類について

担保不動産収益執行で必要な書類は、以下の通りです。

  • 申立人が法人の場合、申立人の商業登記簿謄本や資格証明書(法務局で取得します)
  • 債務者が法人の場合、債務者の商業登記簿謄本や資格証明書(法務局で取得します)
  • 賃借人が法人の場合、賃借人の商業登記簿謄本や資格証明書(法務局で取得します)
  • 固定資産税・都市計画税証明書(税額が記載されているもので、最新年度のものが必要。非課税の場合にも、その証明書が必要です。市町村役場で取得します)
  • 現場案内図等(住宅地図や公図、建物の図面や各階平面図等の書類です)

●必要な費用について

まず、ケースに応じて計算される登録免許税がかかります。こ

れは、請求債権額(ローン残高の額。1000円未満は切り捨てます)の1000分の4の金額です(100円未満は切り捨てます)。たとえば、残ローンが3000万円の場合には、その0.4%である12万円となります。

それと、92円切手を貼った返信用封筒が1枚、必要です。

さらに、予納金が必要です。これもケースに応じて異なりますが、だいたい60万円~90万円程度はかかります。

2-3.担保不動産収益執行開始決定が下りる

申立があり、特に問題がない場合、裁判所は担保不動産収益執行の開始決定を行います。これにより、賃料の差し押さえ手続が進んで行くと考えると良いです。

2-4.管理人の選任

担保不動産収益執行開始決定があると、裁判所は、同時に物件を管理するための管理人を選任します。

管理人として選任されるのは、裁判所の執行官か弁護士です。執行官は、裁判所の職員で、強制執行を担当している人のことです。

賃料の滞納やトラブルが起こっているような困難なケースでは、通常弁護士が選任されます。

2-5.債務者への通知

担保不動産収益執行開始決定があると、そのことが債務者にも通知されます。債務者への通知は、申立からそれほど時間はかかりません(1ヶ月もかからないことが多いでしょう)。

2-6.賃借人への通知

担保不動産収益執行が始まると、裁判所から賃借人に対し、直接通知が行われます。

通知には、「担保不動産収益執行開始のお知らせ」と書いてあり、中には、「担保不動産収益執行が行われることになったので、今後は賃料を裁判所が選任した管理に支払って下さい」ということが書かれています。

また、月々支払っている賃料の額などを記載する「陳述書」が同封されているので、賃借人は、それに記載して裁判所に返送することとなります。

その後は賃借人から管理人に対し、直接賃料が支払われることとなるため、債務者は賃料を受けとることができなくなります。

2-7.賃料の収受と配当

賃借人から管理人に対して賃料が支払われると、管理人はその賃料から固定資産税や都市計画税等の税金を先に支払います。

そして、マンション管理費用や管理人の報酬、管理のための必要経費などを差し引いてから、債権者に対して支払われます。

こういった経費を差し引いた結果、配当をする見込みが立たない場合には、担保不動産収益執行は終了します。

こうした判断が行われるのは、賃料支払いがあったときなので、申立があってから最初の賃料支払いのタイミングであることが普通です。

3.債務者が知っておくべきポイント

担保不動産収益執行が行われるとき、債務者として押さえておくべきポイントを確認していきましょう。

3-1.担保不動産収益執行の通知を確認する

担保不動産収益執行が開始されたら、債務者宛にも裁判所から連絡が来ます。通知には、「担保不動産収益執行開始決定」と書いてあります。

このような書類が届いたら、近いうちに賃料を受けとることができなくなることを覚悟しなければなりません。
また、その後は、賃借人から賃料の振り込みがなくても、賃借人に対して賃料の請求をすることができなくなります。

万一、通知の内容が間違っている場合には、裁判所に対して連絡をしなければなりません。
請求債権目録(ローン債権者の残債権額)や当事者目録(債務者やローン債権者などの当事者名が合っているかどうかなど)を確認しましょう。

3-2.賃借人に対する説明方法

担保不動産収益執行が開始された場合、賃借人に対しては、裁判所から直接その旨が通知されます。そこで、賃貸人として、賃借人に連絡を入れる必要は特にありません。

ただ、裁判所からの通知を受けとった賃借人が、混乱して問合せをしてくる可能性は十分にあります。

その場合、担保不動産収益執行の制度について説明をして、これからは賃料を管理人に支払うよう言いましょう。

また、賃借人によっては、「このまま担保不動産収益執行の手続きが進むと、引っ越ししなければならない」とか「大家が変わった」と思う人がいます。

しかし、担保不動産収益執行が起こったことにより、賃貸借契約が終了することにはなりません。

また、担保不動産収益執行が起こっても、不動産の持ち主は以前の賃貸人(債務者)のままです。単に、賃料の支払先が変わっただけです。

「オーナーが変わった」と誤解している人がいたら、不動産の所有権自体はまだ失われていないことを説明しておきましょう。

3-3.物件の管理をしなくても良くなる

担保不動産収益執行が開始されたら、その後は裁判所から選任された管理人が物件の管理を行うので、債務者(賃貸人)は物件の管理をしなくても良くなります。

物件内でエレベーターやそのた備品の故障等が起こっても、特に対応する必要はありません。賃借人から物件の修補などの要望があったら、管理人に連絡するように言うと良いでしょう。

また、必要経費についても、収受した賃料から支払われることになるため、所有者が払う必要がなくなります。

3-4.並行して競売が進められることが多い

担保不動産収益執行は、賃料の差押えを目的とするものなので、物件自体が売却されることはありません。そこで、担保不動産収益執行が開始されても、手続きが進むことにより、不動産を失う心配をする必要はありません。

しかし、担保不動産収益執行が行われる場合、実際には競売が並行して行われることが多いです。

債権者は、競売で物件の売却を進めながら、その間の賃料を得るため不動産収益執行を行いたいと考えるからです。

また、当初は担保不動産収益執行のみを行っていても、ある程度賃料収入を得ることに成功したら、競売も合わせて進めていくことがよくあります。

そこで、担保不動産収益執行が開始されたら、近い時期に競売の申立があり、その場合には不動産の所有権を失うことを覚悟しておく必要があります。

また、競売によって売却できた代金でローンを完済できない場合には、さらに債権者から督促が行われます。

支払いができないと、ローン債権者は裁判をしたり、債務者の自宅不動産や預貯金、生命保険、給料などの財産を差し押さえたりします。そうした状況になったら、自己破産などの債務整理も検討しなければなりません。

3-5.任意売却を検討するのも1つの方法

担保不動産収益執行が起こるとき、通常はすでにローンを支払えなくなって滞納している状態になっています。この場合、そのまま様子を見て競売が行われるのを待ってもかまわないのですが、競売よりも任意売却の方が、債務者に有利になる可能性があります。

任意売却の方が競売よりも高値で売れるので、残債を大きく減らすことができる可能性が高くなるからです。

そこで、担保不動産収益執行が開始された段階で、債権者に対して任意売却の話を持ちかけるのも、1つの対処方法です。

物件が高く売れて残債を完済できたら債務整理する必要もなくなります。

任意売却については任意売却とはあなたの借金問題を解決する突破口の1つで詳しく説明しています。競売を回避するためにもぜひご覧ください。

まとめ

担保不動産収益執行が行われるのは、投資用の物件であることが多いですが、ローン残高を支払えないと、自宅やその他の財産も差し押さえられる可能性があります。
そのようなことになる前に、債務整理によって状況を整理しておくことが得策です。

いきなりローン債権者から担保不動産収益執行を起こされて、どうしたらよいかわからない場合には、早めに弁護士に相談してみて下さい。

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