
離職したものの、次はどんな仕事に就職しようか誰でも悩んでしまうもの。失業手当は給付されているけど、就職活動だけじゃ時間がもったいない。どうせならこの時間を活用して、次の就職に生かせるスキルを身に付けたいですよね。
そんな人にオススメしたいのが「公共職業訓練」。公共職業訓練は、失業手当を受給している求職者を対象に、再就職で役に立つスキルや技能を無償で学ぶことが出来る訓練です。公共職業訓練を受講するメリットや注意点などを紹介します。
1.再就職のスキルを身に付ける!職業訓練ってどんな制度?
職業訓練ではいくつかの種類があります。
失業手当を受給している求職者を対象とした「公共職業訓練」。
失業手当の受給対象外、または受給期間が満了した求職者を対象とした「求職者支援訓練」。
そして障害のある人を対象とした「職業訓練」。
今回は失業手当を受給している求職者を対象とした「公共職業訓練」についてご紹介します。
職業訓練では、就職の武器として生かせる「資格」や「技能」を身に付ける事ができます。簡単に言うと、就職に役立つ知識を得る事が出来る学校です。
希望する職種があるけど、その職種の経験も知識もない場合、誰でも就職出来るのか不安になりますよね。例え未経験の仕事を希望していたとしても、職業訓練で取得した資格や知識を生かし、再就職するというのが職業訓練の目的です。
受講内容も多様な科目やコースがあり、受講期間も3ヵ月~3年と様々です。自分がどんな職に就きたいのか。その仕事に就くためにはどんな資格や知識が必要なのか?人それぞれの希望に合った科目を受講する事ができます。
2.学校に通いながらお金がもらえる?
テキスト代や教材は実費となりますが、職業訓練は無償で受講する事ができます。資格取得の為の通信教育などでも決して安いとは言えない費用がかかるので、無償で何かを学べるという制度は有り難いですよね。高校や大学、専門学校など、義務教育終了後の教育は育った環境や経済状況で差が出てしまいますが、職業訓練では経済的に余裕がない人でも、就職に有利な知識を学ぶ事ができる制度なのです。
また失業手当の受給期間が満了予定であっても、職業訓練を受けている期間は受給期間が延長されるというメリットがあります。(※ただし受講開始日に失業保険の受給期間に応じた、残日数がある事が条件)この「延長給付」制度については、この記事の「3.失業保険の延長給付とは」で詳しく説明します。
失業手当はもちろん、訓練を受講した日数分支給される受講手当も支給されます。受講手当は1日500円支給され、1ヵ月単位での支給となりますが、上限は40日(最大2,000円)となります。いわゆる昼食代のような手当です。
また、通所手当と呼ばれる交通費の支給もあります。通所手当はハローワークが定めた、最も安い経路で、電車やバスなどの交通機関を利用して通所した人に、実費相当分(上限42,500円)が支給されます。自動車等で通所した場合は事情次第で支給され、片道10㎞未満なら3,690円。10㎞以上であれば5,850円となります。
要するに、職業訓練の支給額は【失業手当(基本手当)+受講手当+通所手当】です。
職業訓練を受講するために、生計を共にする同居親族と別居せざるを得ない人には、寄宿手当が10,700円プラスされますが、寄宿手当を支給されている対象者はほとんどいません。
3.失業保険の延長給付とは?
公共職業訓練を受けると、延長給付といって、失業保険の給付期間が延長される大きなメリットがあります。それだけでなく、失業保険が受給開始となるまでの給付制限がある場合、公共職業訓練の受講開始日に給付制限が解除されます。給付制限があると3ヶ月程度、待機期間となるので、実質的に無収入となってしまいますが、公共職業訓練に通う事で、待機期間が短縮されるのです。給付制限解除は、公共職業訓練を受講する人のみが対象となり、「求職者支援訓練」では適用されません。
失業保険の延長給付を受ける条件として、管轄のハローワークから「受講指示」を出してもらう必要があります。
受講指示とは、職業訓練を受けたことで求職者の再就職が有利なものになると判断した場合に出されます。受講指示がなければ、延長給付を受ける対象となりません。
また、受給指示には「3分の2ルール」「120日ルール」と呼ばれる2種類の基準があります。
「3分の2ルール」は所定給付日数の2/3日数分の支給を受け終わるまでに訓練開始をしなければいけないというルールです。つまり、所定給付日数が150日だった場合、100日分の支給を受ける前に訓練を開始させなければ、受講指示が出されないのです。
「120日ルール」は所定給付日数が120日以内である場合に適用されます。この場合、120日の給付日数が終わるまでに訓練を開始していれば受講指示の対象となります。
簡単にいうと、所定日数が120日以上ある人は3分の2ルールが基準とされ、所定日数が120日未満であれば120日ルールが基準となります。このルールは失業保険の給付延期を目的とした受講者が増えないための対策でもあるのです。
4.サボりは厳禁!8割以上の出席がないと支給されない給付金
無償で勉強もできるし、しかも給付金まで貰えるなんてラッキー!と思うかもしれませんが、職業訓練で給付金を支給するには、一定の出席日数を満たさなければいけません。
まさか適当に受講して適当に休もうなんて思っている人はいないと思いますが、職業訓練では8割以上の出席がないと、支給対象外になります。
例えば1ヵ月の受講日数が20日だった場合、0.8×20(受講日数)=16となります。つまり16日以上の出席がなければ8割の出席を満たした事にならないのです。そして8割以上の出席があるものの、やむを得ない理由以外での休みが一日でもあれば、支給対象外になります。
受講するコースや訓練の方針によって、差はありますが、遅刻や早退も欠席扱いとなる場合もあるので、訓練開始前に訓練に通う機関や、管轄のハローワークに確認しておきましょう。
再就職の為に受ける訓練なので、欠席や遅刻、早退なんてもっての他ですよね。また、お金目的で訓練を受ける人や不正受給を防ぐためにも、出席日数について厳しい基準を設けているのです。ただし、下記のような「やむを得ない理由」での欠席や遅刻、早退の場合であれば、欠席扱いになりません。
■やむを得ない理由
- 病気やケガで自宅療養。または通院※1
- 父、母、子供、配偶者の死亡(7日以内の欠席)
- 祖父、祖母、孫、兄弟の死亡(3日以内の欠席)
- 6親等以内の血族、または3親等以内の姻続の死亡(1日のみ欠席)
- 中学生以下の子供、または弟の入学式や卒業式への出席
- 3親等以内の命日の法事
- 6親等以内の血族、3親等以内の姻族。別居の親族(3親等以内)の看病※2
- ハローワークが認める場合
※1 14日以上の療養の場合、訓練担当者と相談。針や灸での欠席は認められていない。
※2 看病の内容や状況によっては認められない場合があるので、事前の相談が必要
上記がやむを得ない理由となります。やむを得ない理由だとしても、必ず理由を証明できるものが必要となります。病気やケガの場合、診断書や傷病証明書。通院だけであれば、名前や日付、病院名が記載された薬袋や領収書(レシート不可)でも証明できますが、歯科や眼科の場合は診断書が必要となります。
また、身内の不幸による欠席は、死亡診断書の写しや、葬儀の礼状。死亡した人と欠席した本人の続柄を証明できるものなど。入学、卒業式ならば、主催者の証明印があり出席した事がわかるものや、学校からの案内などとなります。やむを得ない理由で欠席する場合、事前にわかっているのならば、訓練担当者や管轄のハローワークに問い合わせて確認するのが良いでしょう。
それ以外も、電車など公共交通機関の遅延で遅刻した場合は、訓練担当校に連絡し、駅で配布される遅延証明書を担当校に提出しましょう。
5.職業訓練は何を学ぶか自分で選べる!
多種多様なコースが設けられている職業訓練。地域ごとにコースの種類は様々。今までの職業訓練で学べる技術って、機械や技術関連や、事務職などで活用できるパソコンの基礎。といったイメージが強いですよね。
しかし近年では、職業の多様化により幅広いコースが展開されています。例えば、グラフィックデザイナーを目指す人にデザインの勉強。女性に人気の職業である、ネイリストやアロマセラピスト、洋裁などの仕事に携わりたい人のためのコース。需要が増えている、介護職や医療関係の仕事に就くためのコースなど、時代の変化と共に進化し続ける職業のニーズにあわせ、職業訓練のコースも増えています。
コースによって、受講する場所も違いますが、中には専門学校の中に設立された「職業訓練課程」もあります。職業訓練を受講する人の年齢層は様々です。20代の若者、既婚者、60代以上の方…。学生時代には関わる事のなかった年代の人と一緒に学ぶ事が出来るなんて斬新ですよね。
就職の為に必要となるスキルや資格を取得するだけでなく、自分と違う年齢、生活を送っている職業訓練校のクラスメイトから、生きていく中で必要な知恵も教えてもらえるかもしれませんね。
自分の住む地域にどんな職業訓練があるのか気になった場合は、インターネットで検索するだけでなく、管轄のハローワークで訪ねてみましょう。コースはもちろん、応募期間や受講開始日も、訓練を受講する期間もそれぞれ違う職業訓練。内容を詳しく記載したパンフレットを配布しているので相談してみてください。
6.入校する為の手続き
受講したいコースが見つかれば、次は申し込み手続きとなります。
職業訓練の申し込みは、自分の住所地を管轄するハローワークの窓口で行います。受講したい訓練の所在地を管轄するハローワークに間違えて提出してしまうと、延長給付が受けられなくなってしまいます。
職業訓練は求職中の人が対象となる為、申し込み前に「求職の申し込み」手続きも必要となります。
職業訓練を申し込む際に必要な書類としては以下の書類が必要です。
- パンフレットに付属された選考受付票
- 証明写真(縦3㎝×横2.5㎝)
- 失業保険の受給資格者証 ※1
※1 申し込み時に持っていない場合は不要
まだ退職していない人でも職業訓練に申し込む事ができます。この場合、訓練開始日に退職が確定していれば応募可能となります。つまり失業手当の受給資格者証が申し込み時に手元にない場合でも、訓練開始日までに受給資格を得ていれば大丈夫。しかし訓練開始日までに受給資格が得られなかった場合は合格が取り消されてしまいます。
また職業訓練を受けるには、過去1年以内に職業訓練を受けていない事が条件となります。前回の職業訓練が1年以内に終わったという人(または、受講期間満了前に辞めてしまった人)は対象外になります。職業訓練の受講が初めての人は問題ありませんが、2回目以降の場合は前回の訓練がいつ行われたのか確認しておきましょう。
7.職業訓練校の入校試験
申し込みが終われば、次は入校試験です。普通の学校と同じように職業訓練校でも入校試験があり、誰でも入校できるという訳ではないのです。
入校試験では、学力を確かめる為の筆記試験と面接試験の2種類が行われます。志望するコースが人気の高いコースは競争率も高いので、入試試験で良い結果を出したいですよね。
筆記試験の難易度は各都道府県によって多少異なりますが、基礎的学力を調査するものなので、読み、書き、計算問題を中心とした問題が多く、難易度は義務教育終了までの程度とされています。入試試験の過去問題を公開している都道府県もあるので、参考にしてみましょう。
面接試験では、コースの志望動機や求職活動の状況などを質問されます。職業訓練は求職中の人を対象としているので面接を通じて、就労意欲があるのか、職業訓練をまじめに取り組むのか、見極めるものです。入試試験の前になぜこのコースを志望するのか、学んだ知識や取得した資格でどのような職業に就きたいのか…。自分の考えや思いを面接で伝えられるように整理しておきましょう。
この2種類の入試試験の他に、会社都合で退職した人は、自己都合退職の人より優先されやすく、また自分の住所地の管轄エリア以外で職業訓練を申し込んだ人よりも、「地元の人」が優先されます。
つまり
■入試試験の結果
■退職理由や今までの雇用状況
■求職活動に対する意欲
■所在地
■年齢(志望コースに適した年齢が記されている場合)
などの入試試験の視点以外からも、職業訓練を受けるべき人なのか、そうでないのか判断されるのです。
8.職業訓練中ってアルバイトしてもいいの?
失業手当受給中であれ、時間や条件を守り、管轄のハローワークへ申告すれば、アルバイトも許可されていますが、職業訓練中もアルバイトをしていいのでしょうか?
いくら失業手当や受講手当を支給されているからといって、失業前のお給料と支給額を比較すると全然少ないなんて場合もあります。自分一人ならまだしも、家族を養っていかなければいけない人もいるので、アルバイトをする前に求職活動をするべき!とは言えませんが、職業訓練中のアルバイトを禁止している訓練校もあるので、アルバイトをする必要がある人は、入校前にアルバイトが出来るかどうか、志望するスクールに聞いておきましょう。
もしアルバイトOKでも、気を付けなければいけない事があります。失業手当の延長給付を受けている人は就労扱いにならない程度でアルバイトをしましょう。これは失業手当受給中のアルバイトでの注意点と同じですが、1週間20時間以上のアルバイトをすると就労扱いとみなされ、失業手当の支給額が減額されてしまします。
また、失業手当受給中の就労扱いで支給が先延ばしになってしまう事がありますが、公共職業訓練を受講している人は先延ばしではなく、支給自体がなくなってしまいます。要するに、アルバイトをするにしても1日4時間以内、週20時間までにしておきましょう。
就労とみなされる基準はハローワークの担当者によって少し差があるようなので、時間の条件だけでなく、アルバイトで得た収入額も影響します。失業手当の受給打ち切りだけでなく、退校処分や不正受給として処罰される可能性もあるので、アルバイトをする場合はしっかり確認しておくべきです。
9.まとめ
なんといっても、受講料無料で就職に役立つノウハウを取得できるのが、職業訓練の最大の魅力です。また失業手当の延長給付により、安心して学びながら求職活動に専念する事ができます。
コースによっては、国家資格取得や実地試験の免除、学割の適用が受けられるものまであります。
生活リズムも乱れやすく、人と話す機会が少なくなってしまう求職活動中。いろんな境遇のクラスメイトと一緒に就職を目指せる職業訓練校は、なんだか心強いですね。昔と比べると、難しい条件や厳しい選考となっていますが、その分、魅力的なコースも増えてきているので、この機会にもう一度学んでみてはいかがでしょうか?
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