差し押さえを回避したい方

固定資産税を滞納した時に必ず知っておきたい全知識

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不動産を持っていると、固定資産税を納付できなかったり納付を忘れてしまったりするリスクが常に付きまといます。事実、固定資産税の支払いを後回しにした結果、自宅が競売になってしまう人が後を絶ちません。
しかし、多くの人は知らないですが、固定資産税を滞納してしまっても、競売を防ぐ方法が実はたくさんあるのです。
そこで今回は、固定資産税を滞納してしまった場合にあなたがとれる対処法をケースバイケースで紹介していきます。自宅やアパートなどの不動産を持っている方なら誰でも起こりうることですので、この機会に一度目を通し、もし滞納してしまった場合にはいつでも対処できるようにしておきましょう。

 

0.固定資産税を滞納したら最終的に財産を強制的に売却されてしまう!

まずは、固定資産の滞納が始まって財産が売却されるまでの典型的な事例を紹介していきます。

■固定資産の滞納が始まって財産が売却されるまでの典型的な事例

Aさんは親の病気がきっかけで急な出費が重なり、家計の収支がよくありません。
親の介護費用、住宅ローンの支払いなどで、固定資産税の支払いを後回しにしてしまい、とうとう固定資産税の支払いを滞納してしまいました。
納付期限が切れて一時すると、市役所から固定資産税の「督促状」が届きました。
Aさんは、支払いの目途がついてから連絡しようと思い、その督促状は無視しました。
それから連絡が何もなかったので、Aさんも滞納のことは気がかりになっていたものの、資金繰りは苦しい状態が続いていたので、そのまま放置を続けました。
約半年後のある日、再び市役所から「督促状」が来ました。Aさんは資金繰りの心労で疲れており、この督促状も無視してしまいました。
この督促状を受けて2週間もしない内に、Aさんの自宅は差し押さえられてしまいました。
税金の差し押さえが入ったことが原因で、金融機関は保証会社に代位弁済を行うことになり、このままでは自宅が競売になってしまうことがわかりました。
Aさんは、住宅ローンだけは遅れずに返済してきましたが、まさか税金の滞納が原因で自宅が競売になるとは思ってもいませんでした。
Aさんは慌てて市役所に相談に行きましたが、市役所は「滞納を解消しない限り差し押さえは解除できません。」と一点張りです。Aさんには滞納額を一括で解消するお金が手元になかったため、Aさんの自宅はそのまま競売になってしまいました。

この事例で大切な教訓が2つあります。

1つ目は、Aさんには市役所に相談にいく機会が2回もあったのに、それを無視してしまったことです。
無視してしまうと、「納税しようする誠意がない」と判断され、相談にのってもらえなくなります。
2つ目は、「税金の滞納」が、「自宅の競売」に繋がることを理解していなかったことです。
住宅ローンの返済は遅れていなくても、税金の差し押さえに合うと自宅は競売になります。

このように、滞納を放置してしまうと、財産を強制的に売却されて強制徴収されてしまいます。
固定資産税の滞納問題には甘い考えが一切通用しません。そこで、自分に最大限メリットがある方法を特定して、しっかりと準備して交渉に挑むことが大切です。この記事ではそのコツを書いていきますので、参考にしてください。
それでは次に、固定資産税を滞納すると何が起こるのかを確認していきましょう。

■税金を滞納してから財産が売却されるまでの流れ

  1. 滞納発生
  2. 徴収職員による督促状の発送
  3. 財産調査(金融機関、保険会社、取引先への照会など)
  4. 財産の差し押さえ(給与、預金、不動産、保険、売掛金など)
  5. 財産の売却などで滞納を解消

順番に内容をみていきましょう。

流れ1:滞納発生
税金には納付期限があり、納付期限を過ぎてしまうと「滞納」となります。滞納になってしまうと、延滞税が発生し、督促や催告の準備が行われます。
★ここでのポイント

あなた分納で滞納を解消したいのであれば、このタイミングで徴収職員に相談に行くことがベストです。自分から滞納を解消する相談をしてくる納税者は少ないですので、徴収職員に好印象を抱いてもらえます。
滞納が発生する「前」でも当然OKですが、滞納してしまったら、自分から相談に行くようにしましょう。

流れ2:徴収職員による督促状の発送
あなたが自分から相談に行かなければ、徴収職員から督促が行われます。納付期限から20日以内に督促状が発送されます。
★ここでのポイント

「督促状を発送した日から10日を経過するまでに滞納が解消できない場合は、滞納者の財産を差し押さえなければならない。」と法律で決まっています。これは、10日を経過した後は、いつでもあなたの財産を差し押さえることが可能ということです。もし督促や催告のコンタクトがあった場合は、「必ず」対応するようにしましょう。このコンタクトを「無視」してしまうと、あなたには「納税しようとする誠意がない」と判断され、財産を差し押さえられるリスクが高まります。なので、電話でも良いので、いついつまでにいくら納付するなどの説明をするなどの説明を行うようにしましょう。

流れ3:財産調査(金融機関、保険会社、取引先への照会など)
あなたが、督促や催告の無視を続けると、徴収職員は「財産調査」を始めます。
財産調査とは、あなたの預金がいくらあるか、解約返戻金の発生する保険はないかなどの調査です。
あなたが事業主で、取引先に財産調査などされたら、取引を停止されるリスクもあります。
ここまで手続きが進んでいるということは、よほど滞納額が大きいか、あなたに「納税しようとする誠意がない」と徴収職員に判断されたためです。このタイミングで分納の相談をしても、残念ながら断れる可能性が高いです。

流れ4:財産の差し押さえ(給与、預金、不動産、保険、売掛金など)
差し押さえができる財産がある場合は、財産の差し押さえが行われてしまいます。
差し押さえられる財産・差し押さえが禁止されている財産の違いは、この記事の「3.差し押さえが禁止されている財産について」で説明します。

流れ5:財産の売却などで滞納を解消
差し押さえた財産は「公売」という方法で売却されてしまいます。
住宅ローンが残っている自宅を持っている場合は、税金滞納の差し押さえが入ることで、「競売」の手続きが開始されます。

どのタイミングで相談すべきか、相談を無視するとどうなるのか、イメージを掴めたでしょうか?
資金繰りが苦しく、分割して納付する「分納」を希望する場合は、早めに相談することを心掛けてください。

1.滞納を解消するための3つの分納方法

税金の滞納を解消するには、分割して納付する「分納」という手続きで滞納を解消することができます。
「分納」には以下3つの手続きがあります。

  1. シンプルで簡単な手続きで行える「通常の分納」
  2. 書類の準備は大変だけど、よりメリットの多い「納税の猶予(徴収の猶予)」
  3. 財産の売却を先延ばしにしてもらい、その間に分納を行う「換価の猶予」

また、お金がなく、生活が困窮してしまっている人は、「滞納処分の停止」という手続きを利用して、滞納した税金を0円にすることも可能です。詳細を知りたい方はこの記事の「2.自宅を残しながら滞納した税金を0円にできる滞納処分の停止」を参照にしてください。

固定資産税の滞納の解消を行うには、全員、上記3つのいずれかの手続きを選択することになります。
まずは以下のフローチャートでざっくり全体像をつかんでみてください。

詳細は以下で説明していきます。

1-1.分納方法その1 シンプル・簡単な通常の分納

通常の分納とは、多くの人が利用している一般的な分納方法です。特に書類も準備せずに、気軽に行える手続きですので、書類の準備が面倒な方はこの「通常の分納」を行って滞納を解消していきます。
この手続きのメリット・デメリットをまずは確認しておきましょう。

■通常の分納のメリット・デメリット

(メリット)

  • 手続きがシンプルで簡単

(デメリット)

  • 延滞税の免除がない
  • 差し押さえリスクが残る
  • 弁明の機会がない(返済が遅れた時に事情を説明する機会)

通常の分納の相談では、ただ単に徴収職員と打ち合わせをして、あなたが作った分納計画通りに納税していけばそれで手続きが終わります。簡単でとても使い勝手が良さそうです。
しかし、口約束であることと、万が一分納計画通りに納税できなくなった時に、「弁明の機会」が設けられずに直ちに差し押さえにあってしまうリスクが残ります。また延滞税(年利9.1%)も発生してしまいます。

1-1-1.通常の分納の流れとコツ

「通常の分納」のやり方は、電話や窓口に出向くなどして分納の相談を行うだけです。
ここで注意してほしいのは、「納税の誠意」を示すためにも、早い段階で自分から相談に行くことです。
「通常の分納」を希望する方は、さっそく分納の相談を行うために、自治体の固定資産税を取り扱う課(例:「資産税課」など)に出向くか、電話での相談を行うようにしましょう。
滞納している税金の額が高額でなく、数回の分納で解消できるようなケースであれば、特に細かいことも聞かれないで済みます。あなたが説明した通りに、分納していけばOKです。
ただし、滞納している税金の額が大きかったり、分納の期間が1年を超えたりするようなケースでは、細かいヒアリングは行われる可能性があります。
ヒアリング内容としては、

  1. 滞納の理由
  2. 収支状況や財産の状況
  3. 今すぐ納めることが可能な金額の確認
  4. 分納の大まかな計画

上記4つのことを確認されます。
分納計画の内容を決める上で利用される目安は以下の通りです。

目安1:分納期間は原則1年。1年で解消できそうにない場合は、更に1年延長できる

目安2:現時点で支払える金額(預貯金など)は、分納開始時にすべて税金の納付に充てる

目安3:分納開始後は、毎月の生活費などを控除して残ったお金を税金の納付に充てる

上記のような目安を基準に、分納の話し合いが行われる可能性が高いので、予め把握しておきましょう。
申請する際に預貯金がある場合は納税に回さなければいけないため、億劫になるかもしれません。
しかし、いずれにせよ強制徴収されるものですので、腹を括って納税したほうがあなたのためにもなります。
理由は、ちまちま滞納を解消していっても、延滞税は発生し続け、翌年には新たな固定資産税が発生し、いつまでたっても滞納が解消されない負のスパイラルに陥ってしまうことを防げるためです。

なお、どうしても預貯金を納付に回せない理由がある場合は、その旨も相談してみると良いでしょう。例えば、直近で子供の入学金を納める必要があり、入学金のための預貯金を取り崩せないケースなどは、この入学金も生活費の中に考慮する対応も可能です。
無理な計画を立てる必要はありませんので、1ヶ月分の支出以外にも、不測の事態に備えた予備のお金をとっておく理由がある場合は、必ず相談するようにしましょう。
通常の分納では、滞納している税金については延滞税(年利9.1%)が発生し続けるため、できる限り早めに滞納を解消できる分納計画にするほうが一時的苦しくなりますが、総体的にみてあなたにとって有利な滞納解消に繋がります。
以上が、通常の分納のやり方です。

1-2.分納方法その2 書類の準備は大変だけど、メリットの多い「納税の猶予(徴収の猶予)」

通常の分納よりもメリットの多い「納税の猶予(換価の猶予)」について内容をみていきます。
「納税の猶予(徴収の猶予)」を利用した分納は以下のようなメリット・デメリットがあります。

■「納税の猶予(徴収の猶予)」のメリット・デメリット

(メリット)

  • 延滞税を50%~100%免除できる
  • 万が一、分納計画通りに納税ができなくなっても、「弁明の機会」が必ず与えられる
  • 差し押さえができなくなる
  • すでに差し押さえがなされている場合は、一定の要件に該当すれば、差し押さえを解除できる

(デメリット)

  • 書類の準備が大変

全員が利用できる訳ではないですが、病気やケガで急な出費が重なってしまった人や、事業不振などが原因で収入が減ってしまった人などは、この「納税の猶予(徴収の猶予)」を利用できる可能性が高いです。
また、とりあえず「通常の分納」を始めた後に「納税の猶予(換価の猶予)」に切り替えることも可能ですので、興味のある方は読み進めてください。

固定資産税は地方税になるため、納税の猶予の呼び方が「徴収の猶予」に代わりますが、地方税であっても国税徴収法の規定が適用されますので、考え方は同じになります。(地方税法第373条7項)

1-2-1.納税の猶予(徴収の猶予)を利用するための利用条件

納税者にとって有利な分納制度である「納税の猶予(徴収の猶予)」を利用するための利用条件をみていきましょう。

■「納税の猶予(徴収の猶予)」を利用するための利用条件

  1. 災害・盗難にあってしまった場合
  2. あなたや、あなたの家族・親族が病気・ケガになってしまった場合
  3. 事業を廃止・休止した場合
  4. 事業で著しい損失を被った場合
  5. 災害・盗難・病気・ケガではないけれど、似たような事が起こった場合
  6. 事業の廃止・休止・著しい損失を被ったわけではないけれど、似たような事が行った場合

以上の6つの内、どれか1つに該当すれば、「納税の猶予(徴収の猶予)」が利用できます。
また、1番~4番に該当する場合は延滞税が100%免除され、5番~6番に該当する場合は延滞税が50%免除されます。
5番や6番は範囲がとても広くなりますので、ほとんどの方が利用できる可能性があることになります。
例をいくつかみてみましょう。

(例)

【アパート・マンションを経営している家主さんの場合】

  • 空室が多くなってしまい、収入が減ってしまった。
    → 6番が該当する可能性があります。

【サラリーマンの方の場合】

  • 業績不振で収入が減ってしまった、またはリストラにあってしまった。
    → 6番が該当する可能性があります。
  • 病気やケガが原因で、収入が減ってしまった。
    → 2番、5番、6番が該当する可能性があります。
  • 親の介護が必要になり、仕事を減らすなどして収入が減ってしまった
    → 2番、5番が該当する可能性があります。

もし、少しでも該当しそうな方は、「納税の猶予(徴収の猶予)」を利用した分納手続きを検討してみましょう。

なお、詳細な利用条件の説明は、「納税の猶予等の取扱要領」の第2章第1節4(3)に記載されていまので参考にしてください。

1-2-2.「徴収の猶予」の流れとコツ

  1. 徴収猶予申請書、必要書類の提出
  2. 現在納付可能資金額の納付
  3. 行政による書類審査
  4. 「猶予許可通知書」または「猶予不許可通知書」が届く
  5. 分納計画通りに分納の開始

ステップ1:徴収猶予申請書、必要書類の提出
書類を準備し、印鑑も持参し、自治体の固定資産税を取り扱う課(例:資産税課など)に換価の猶予のお願いにいきます。書類の作成方法は「徴収の猶予・換価の猶予の必要書類の作成方法」で確認してください。
窓口に着いたら、「徴収の猶予の申請をしますので、申請書などを提出させていただきます。」と伝えましょう。
行政側は、あなたの申請を拒否できませんので、申請書は必ず受理してもらいましょう。

ステップ2:現在納付可能資金額の納付
また、「現在納付可能資金額」を納付する必要があるため、現在納付可能資金額の納付書を徴収職員に作ってもらいます。「現在納付可能資金額が○万円のため、○万円の納付書を作成いただけますか?」とお願いすれば、徴収職員がその場で作成してくれます。
その納付書を持って、自治体の中にある金融機関の窓口などで振込をして納付をしましょう。

ステップ3:行政による書類審査
書類の内容に不備があれば、行政から補正通知書という書類が届きます。
補正通知書を受け取ったら、20日以内に内容を補正した書類を再提出するようにしましょう。20日を超えると猶予の申請を取り下げたものとしてみなされてしまいます。
書類内容について確認事項がある場合は、あなたに質問や確認の連絡がなされます。

ステップ4:「猶予許可通知書」または「猶予不許可通知書」が届く
徴収の猶予が許可された場合は、「猶予許可通知書」が届きます。
通知書に「分割納付計画」が記載されていますので、その通りに納付しましょう。
また、許可の内容が、一部の滞納金額についてのみ許可となるようなケースや、そもそも不許可になってしまった人は、処分のあったことを知った日から60日以内に、「異議申立」、または「審査請求」を行います。

ステップ5:分納計画通りに分納の開始
「猶予許可通知書」に記載された「分割納付計画」に不満がない場合、遅れたりしないようにきっちり納付を行うようにしましょう。計画通りに納付しないと、猶予が取り消されることもあります。
ただし、その場合はあなたに「弁明の機会」(言い訳をいう機会)が与えられますので、直ちに財産が差し押さえに合うリスクはありません。

以上が、納税の猶予(徴収の猶予)を利用方法です。
利用条件に当てはまる方は積極的に納税の猶予(徴収の猶予)を活用しましょう。

なお、納税の猶予を含む、納税の緩和制度の詳細は、国税庁が作成した「納税の猶予等の取扱要領」に詳しく記載されています。
この「納税の猶予等の取扱要領」は、納税者にとっては強力な武器になります。
納税の猶予を検討したい方は、分納の交渉に挑む前に熟読して、交渉の際にもこの書類をコピーして持参することで、あなたの交渉を有利に運ぶことが可能になります。ぜひ目を通して見てください。

1-3.分納方法その3 財産の売却を先延ばしにしてもらい、その間に分納を行う「換価の猶予」

「納税の猶予(徴収の猶予)」の利用条件に該当せず、すでに財産を差し押さえられている人は、「換価の猶予」という手続きを検討します。
「換価の猶予」を利用した分納は以下のようなメリット・デメリットがあります。

■「換価の猶予」のメリット・デメリット

(メリット)

  • 延滞税を50%免除できる
  • 財産の換価(売却)を一時的に先延ばしにできる

(デメリット)

  • 換価の猶予が認められる可能性は低い

換価とは売却のことで、すでに差し押さえられた財産の強制売却にストップをかけることができる制度です。
この制度を利用すれば、あなたの財産の売却を一時的(1年~2年)にストップをかけ、その間に滞納を解消することであなたの財産を守ることができます。
また、換価の猶予が認められれば、換価の猶予中の延滞税が1/2免除されるメリットもあります。
利用条件は以下の通りです。

■換価の猶予の利用条件

  1. すでに財産を差し押さえられていること
  2. 財産を売却されると、生活に困窮する、または事業の継続が困難になる恐れがあること
  3. 換価の猶予を受ける固定資産税以外に、税金の滞納がないこと
  4. 納税について誠実な意思があると認められること

条件はこれだけです。

要するに、差し押さえられた財産を売却されてしまうと、生活や事業に支障がでて困ってしまう人であれば誰でも申請することができます。

例えば、たこ焼き屋を営んでいる人が車を処分されてしまうと事業が継続できなくなりますし、生活も困窮してしまいますね。このような場合に、換価の猶予を申請することで、最長2年、車の強制売却を阻止することが可能になります。

換価の猶予の詳細は、国税庁が作成した「納税の猶予等の取扱要領」に詳しく記載されていますので一緒に目を通すようにしてください。

なお、平成27年時点では、固定資産税などの地方税に関する換価の猶予を行うための「申請権」は、納税者に付与されておらず、あくまでも「お願い」するスタンスで交渉を行う必要があります。
よって、お願いを拒否される可能性が非常に高い制度であり、ダメ元で「お願い」することは構いませんが、あまり大きな期待はしないでください。
お願いを拒否された時に、苦情申立書の提出や行政訴訟を起こすことも可能ですが、その間に財産を売却されてしまっては元も子ありませんし、訴訟の際の弁護士費用も大きな負担になります。
よって、正直あまり使えない制度と化している現在の「換価の猶予制度」ですが、今後は「申請権」が付与されることと、「お願い」が受理されるケースもあるため、ダメ元でも挑戦されたい方は目を通してみてください。

1-3-1.換価の猶予(徴収の猶予)の流れとコツ

  1. 換価の猶予に関する上申書、必要書類の提出
  2. 現在納付可能資金額の納付
  3. 行政による書類審査
  4. 換価の猶予を認めるかどうかの回答
  5. 分納計画通りに分納の開始

ステップ1:換価の猶予に関する上申書、必要書類の提出
書類を準備し、印鑑も持参し、自治体の固定資産税を取り扱う課(例:資産税課など)に換価の猶予のお願いにいきます。書類の作成方法は「徴収の猶予・換価の猶予の必要書類の作成方法」で確認してください。
窓口に着いたら、「換価の猶予をお願いしたいので、相談にのってください」と伝えましょう。
納税者は弱い立場なので、行政側はあなたの「お願い」を簡単に断ることはできません。
もし、全く取り合ってもらえない場合は、会話を録音しておくなどの対策をとり、「換価の猶予の相談にのってもらえない理由」を明確に回答してもらうようにしましょう。
これを利用して、「苦情申立書」を提出し、行政を相手どって訴訟を行うことができます。けれどもこの方法は、弁護士費用等、新たな問題が発生しますので、断られた場合は、泣き寝入りするしかないのが実情です。そのため、お願いするときはできるだけ誠実に振る舞い、担当者の印象を上げるように努めてください。

ステップ2:現在納付可能資金額の納付
換価の猶予の「お願い」を受理してもらえた場合、「現在納付可能資金額」を納付する必要があります。「現在納付可能資金額が○万円のため、○万円の納付書を作成いただけますか?」とお願いすれば、徴収職員がその場で作成してくれます。
その納付書を持って、自治体の中にある金融機関の窓口などで振込をして納付をしましょう。

ステップ3:行政による書類審査
書類の内容に不備があれば、行政から補正通知書という書類が届きます。
補正通知書を受け取ったら、20日以内に内容を補正した書類を再提出するようにしましょう。20日を超えると換価の猶予の「お願い」を取り下げたものとしてみなされてしまいます。
書類の内容に確認事項がある場合は、あなたに質問や確認の連絡がなされます。

ステップ4:換価の猶予を認めるかどうかの回答
上申書の審査結果は、申請許可の場合は「猶予許可通知書」、不許可の場合は「猶予不許可通知書」という形で通知されます。万が一口頭で連絡を受けた場合は、書面で回答をくださいとお願いしましょう。これは、権利が発生した証拠を残すためです。
許可された場合は、「分割納付計画」を一緒にもらえます。この「分割納付計画」通りに税金の納付をすれば、財産の売却を先延ばしにできます。

ステップ5:分納計画通りに分納の開始
分納は必ず計画通りに行ってください。換価の猶予には弁明の機会がないので、納付が遅れるとあなたの財産がすぐに売却されてしまう可能性があります。

以上が換価の猶予に関する説明です。

2.自宅を残しながら滞納した税金を0円にできる滞納処分の停止

ここまでは、滞納した税金を分納して支払う方法について説明をしてきましたが、ここからは、滞納した税金を0円にしてしまう制度を紹介していきます。
この制度の名前を「滞納処分の停止」といいます。
本当にお金のない人にとっては、この制度の利用価値は非常に高いため、制度の詳細を理解して、利用条件に該当する方は積極的にこの制度を活用しましょう。
ただし、この制度も換価の猶予と同様に「申請権」がないため、あくまでも「お願い」のスタンスで交渉する形になります。
当然、断られるケースもありますので、その点は予め知っておいてください。
詳細は、全国商工団体連合会の「滞納処分の停止に関する取扱いについて」で確認できます。

滞納処分の停止の利用条件は、以下3つのうち、1つの要件に該当すればOKです。

■滞納した税金が0円になる「滞納処分の停止」の利用条件

  1. 滞納処分を執行できる財産がないとき(1号要件)
  2. 生活を著しく窮迫させる恐れがあるとき(2号要件)
  3. 滞納者の住所と財産がともに不明であるとき(3号要件)

順番に簡単な内容をみていきましょう。

利用条件その1:滞納処分を執行することができる財産がないとき(1号要件)
この条件は、差し押さえできる財産をすべて売却しても税金の滞納が解消できない場合や、現に差し押さえをしているけれど、その財産の売却益から税金の回収が見込めないケースなどが該当します。
また、この1号要件には、納税者が事業を継続している場合でも、事業を継続しながら滞納した税金を0円にできる要件を定めています。詳細は「2-2.事業を継続しながら滞納した税金を0円にするための条件」を確認してください。

利用条件その2:生活を著しく窮迫される恐れがあるとき(2号要件)
この条件は納税者の収入が少なく、財産があっても、それを生活費に充てる必要がある場合や、その財産が生活の維持に必要不可欠と認められる場合です。
「納税者の収入が少ない」と言える基準は、国税徴収法上の「差押禁止額」から判断されます。手取り収入が差押禁止額以下であれば収入は少ないと言えます。
あなたの世帯状況によって差押禁止額は変わります。
計算は、静岡県浜松市役所の「給与等の差押可能金額計算書」が役に立ちます。

「給与等の差押可能金額計算書」 EXCELファイル(引用元:静岡県浜松市)

差押禁止額以下となる手取り収入(月額)目安は、単身者の場合約10.1万円、2人家族の場合は約14.5万円、3人家族の場合は19万円です。
また、この2号要件には、自宅を残しながら滞納した税金を0円にできる要件を定めています。詳細は「2-1.自宅を残しながら滞納した税金を0円にするための条件」を確認してください。

利用条件その3:滞納者の住所・財産がともに不明な場合(3号要件)
この条件は、納税者(滞納者)の住所(居所)・財産がともに不明なケースが該当します。
より詳細は条件については、全国商工団体連合会のホームページに掲載されている「滞納処分の停止に関する取扱いについて」で確認することができますので参照にしてみてください。

2-1.自宅を残しながら滞納した税金を0円にするための5つの条件

もしあなたが以下の5つの条件にすべて該当する場合は、自宅を残しながら滞納した税金を0円にすることが可能です。

■自宅を残しながら滞納した税金を0円にするための5つの条件

  1. 納税者が高齢者である、または病気やケガその他これに似たような状況であること
  2. 手取り収入が差押禁止額以下であり、今後3年間において収入の増加が見込めないこと
  3. 自宅が、納税者の生活にとって必要最低限であること
  4. 自宅を売却した場合に、親族やその他の者と同居することが不可能であること
  5. 自宅を売却した場合に、引越費用や1年分の家賃を用意できないこと

順番に内容をみていきます。

条件その1:納税者が高齢者である、または病気やケガその他これに似たような状況であること
文字通り高齢者だったり、病気やケガをしてしまったり、収入を得られる状況にない場合が該当します。
他にも特別な事情で収入が確保できない状況に陥っている方もこれに該当する可能性があります。

条件その2:手取り収入が差押禁止額以下であり、今後3年間において収入の増加が見込めないこと
差押禁止額の基準は上述しましたが、ここではそれに加えて今後3年間に収入の増加が見込めない場合が該当します。

条件その3:自宅が、納税者の生活にとって必要最低限であること
自宅は多くの人にとって生活に必要なものなので、地方の家で普通サイズの家であれば特に問題にならないはずです。自宅が豪邸だったりよほど資産価値の高い立地になり限り、この条件はクリアできるでしょう。

条件その4:自宅を売却した場合に、親族やその他の者と同居することが不可能であること
親族などの身寄りがいない方や、同居を拒否された場合がこの条件に該当します。

条件その5:自宅を売却した場合に、引越費用や1年分の家賃を用意できないこと
条件その4に該当し、アパートのなどに引っ越す場合も、引越費用やこの先1年分の家賃を負担できる財産を持っていない場合は、この条件に該当します。
ただし、自宅を売却して滞納した税金を支払った後に、利益がでて、その利益で引越費用や1年分の家賃を負担できる場合は、この条件に該当しませんので注意してください。

以上5つの条件にすべて該当した人は、自宅を売却せずに、滞納した税金を0円にできる可能性が高いので、「2-3.換価処分の停止のやり方」を確認して、換価処分の停止の「お願い」を行いましょう。

2-2.事業を継続しながら滞納した税金を0円にするための5つの条件

もしあなたが以下の5つの条件にすべて該当する場合は、事業を継続しながら滞納した税金を0円にすることが可能になります。

■事業を継続しながら滞納した税金を0円にするための5つの条件

  1. 現金、預金、売掛金などの「当座資産」と棚卸資産以外に財産がないこと
  2. 「当座資産」を差し押さえると、直ちに事業の継続が困難になる恐れがあること
  3. 「見込納付能力調査」の結果、すべての滞納を解消するまでに10年程度の長期間を要すること
  4. 資力の急激な回復が見込まれないこと
  5. 納税についての誠実な意思を有すると認められること

順番に内容をみていきます。

条件その1:現金、預金、売掛金などの「当座資産」と棚卸資産以外に財産がないこと
この条件は、当座資産や棚卸資産以外に、差し押さえて換金できる財産を持っていない状態が該当します。

条件その2:「当座資産」を差し押さえると、直ちに事業の継続が困難になる恐れがあること
この条件も文字通りですが、「当座資産」を差し押さえられると、事業の継続が困難になる恐れがある場合が該当します。

条件その3:「見込納付能力調査」の結果、すべての滞納を解消するまでに10年程度の長期間を要すること
見込納付能力調査とは、税金が支払えるのかどうかをチェックする調査で、徴収職員が行う手続きです。手続きの内容の詳細は国税庁が作成した「納税の猶予等の取扱要領」に詳しく記載されています。
この調査の結果、滞納を解消するまでに約10年の長期間を要する場合は、この条件に該当します。

条件その4:資力の急激な回復が見込まれないこと
これは、過去3年分の売上や経常損益をみて、過去3年の推移、借金の返済状況、経営再建策の有無などを勘案して判定されます。

条件その5:納税についての誠実な意思を有すると認められること
この判定は、過去3年間に納付期限が到来した税金の納付税額に相当する金額以上の納付を行っており、滞納処分の停止を実施した後も、今後新たに滞納を発生させる恐れがないと認められるかどうかなどを勘案して判定されます。

以上5つの条件にすべて該当した人は、事業を継続しながら滞納した税金を0円にできる可能性が高いので、「2-3.換価処分の停止のやり方」を確認して、換価処分の停止の「お願い」を行いましょう。

2-3.滞納処分の停止のやり方

すでに説明した通りですが、滞納処分の停止を行うための申請権が納税者には付与されておらず、あくまでも「お願い」するスタンスで交渉を行う必要があります。
それではまずは、滞納処分の停止のお願いから、猶予が許可されるまでの流れを確認しておきましょう。

■滞納処分の停止の手続きの流れ

  1. 滞納処分の停止の「お願い」に自治体に出向く
  2. 行政により調査・審査が行われる
  3. 滞納処分の停止通知書が書面で届く

ステップ1:滞納処分の停止の「お願い」に自治体に出向く
申請書等はとくにありませんので、自治体に出向き、滞納処分の停止の「お願い」を行います。

ステップ2:行政による調査・審査
滞納処分の停止をするべきかどうかの調査・審査を行政側で行います。

ステップ3:滞納処分の停止通知書が書面で届く
滞納処分の停止が認められた場合は、「滞納処分の停止通知書」が届きます。
この通知書が届いて3年を経過すると納税義務が消滅し、滞納した税金が0円になります。
滞納処分の停止の利用条件に該当する方は、まずは「お願い」に出向くことが大事ですので、滞納した税金の支払いで困っている場合は、早めに相談してみましょう。

3.差し押さえが禁止されている財産について

差し押さえられる財産は、「差押禁止財産」を除く、金銭的価値があるものすべてとなります。例えば、不動産であったり、有価証券であったり、給与・年金・退職金などが挙げられます。
詳細は、国税徴収基本通達47条の5番~9番を確認してください。
ここでは、差し押さえが禁止されている財産(「差押禁止財産」)について内容を説明していきます。
家財道具や食料・燃料などは「一般の差押禁止財産」です。(国税徴収法第75条
生活保護費や児童手当などの公的な給付金も「差押禁止財産」に該当します。

次に、給与・年金についても、差し押さえが禁止されている範囲があるので、内容をみていきましょう。
給与・年金の差押禁止範囲は、郡山市の「給与差押金額計算書」が役に立ちます。

給与差押金額計算書 EXCELファイル

赤枠の部分のみ、金額を入力すれば、差押禁止範囲を知ることができます。
税金や保険料を考慮せず、単純に給与30万円とし、3人家族の場合で計算すると、差押禁止範囲の給与額は21.2万円となります。

年金の差押禁止範囲も計算も、給与と同じになります。
最後に、退職金の差押禁止範囲をみていきます。退職金の差押禁止範囲を把握するには、浜松市で作成している「退職手当等の差押可能金額計算書」が役に立ちます。

退職手当等の差押可能金額計算書 EXCELファイル

該当する項目に金額を入力すると、自動的に差押禁止範囲が算出されます。
税金や保険料を考慮せず、単純に退職金500万円、勤続年数20年、3人家族の場合で計算すると、差押禁止範囲の退職金の額は76万円となります。

以上のように、公的給付金・給与・年金・退職金は、差押禁止範囲が決まっていますので、併せて確認しておきましょう。

4.まとめ

今回は、固定資産税を滞納した時に必ず知っておきたい全知識として、分納方法や滞納した税金を0円にできる方法をみてきました。
この記事を読めばすべての手続きを自分で行えますので、固定資産税を滞納してしまった場合は、この記事を参考にして、あなたにとって有利な方法で滞納を解消してもらえればと思います。
徴収の猶予・換価の猶予の必要書類の作成方法は「徴収の猶予・換価の猶予の必要書類の作成方法」で確認できますので、実際に利用する際に参考にしてください。

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